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スマート・フォーツー エディション1(RR/6AT)/フォーフォー パッション(RR/6AT)【試乗記】 ツーかフォーかそれが問題だ - webCG クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

スマート・フォーツー エディション1(RR/6AT)/フォーフォー パッション(RR/6AT)

ツーかフォーかそれが問題だ 2015.11.20 試乗記 下野 康史 新しい顔を得て、一段と立派に生まれ変わった新型「スマート・フォーツー」に試乗。オススメは、もはやふたりには十二分に広い室内を持つに至ったフォーツーなのか、それとも後席を備えて“reduce to the max”をやめた「フォーフォー」なのか。気になるのはそこではないだろうか。

フォーツーは限定モデルに

8年ぶり2度目のモデルチェンジを果たしたスマート。最大のニュースは、4人乗りのフォーフォーが復活し、それにより、日本ではフォーツーがカタログモデルではなくなったことである。今後、2人乗りのスマートは限定モデル扱いになる。

日本専用の軽登録モデルをそろえた初代では、2002年に年間6700台まで伸ばしたことがあったが、2007年導入の2代目ではそんな目玉もなく、ここ数年は年販1100~1400台にとどまっていた。需要がこの程度なら、限定モデルで対応していこうというのがメルセデス・ジャパンの新しいスマート戦略である。

2代目は三菱自動車との協業だったが、3代目スマートシリーズのパートナーはルノーである。プラットフォーム(車台)やパワーユニットを共同開発し、フォーフォーはスロベニアのルノー工場でつくられる。

これまでどおり、ドイツ国境に近いフランス、ハンバッハ工場からやってくる新型フォーツーの日本仕様第1弾は、その名も「エディション1」。装備レベルは同じだが、オレンジ(199万円)とブルー(204万円)の2種類があり、各220台の計440台が販売される。

新型「フォーツー」と「フォーフォー」(写真)は10月28日に同時にデビューした。ただしフォーフォーはまだ発売されておらず、2016年1月になる予定。


	新型「フォーツー」と「フォーフォー」(写真)は10月28日に同時にデビューした。ただしフォーフォーはまだ発売されておらず、2016年1月になる予定。
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今回試乗したのは「フォーツー エディション1」のラバオレンジ仕様。今後もフォーツーは「スマートの個性をさらに強めた限定車」として年数回のペースで展開するという。
今回試乗したのは「フォーツー エディション1」のラバオレンジ仕様。今後もフォーツーは「スマートの個性をさらに強めた限定車」として年数回のペースで展開するという。 拡大
オレンジが大胆に用いられたラバオレンジ仕様のポップな室内。インパネやドアには楕円(だえん)形のモチーフが反復される。ステアリングホイールは本革巻き。
オレンジが大胆に用いられたラバオレンジ仕様のポップな室内。インパネやドアには楕円(だえん)形のモチーフが反復される。ステアリングホイールは本革巻き。 拡大
スマートのボディーの骨格をなす「トリディオンセーフティセル」。高張力鋼板と超高張力鋼板の使用割合が51%から72%に高められ、一段と強度が増した。
スマートのボディーの骨格をなす「トリディオンセーフティセル」。高張力鋼板と超高張力鋼板の使用割合が51%から72%に高められ、一段と強度が増した。 拡大
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軽自動車より小さい回転半径

ワンモーションだったノーズが“段鼻”になった。妙に顔に表情が出て、このままピクサーアニメの『カーズ』に出演できそうだ。

2755mmの全長はほぼ旧型並みだが、幅は一気に10cm広がった。全幅1665mm。あと35mm大きくなると3ナンバーである。

しかしその拡幅がもたらすサプライズは、ドアを開けた時の中の見え方だ。もともとスマートの室内は、前後も高さもふたりには十分過ぎるほど広かったが、これに幅の余裕が加わって、キャビンにもはやマイクロミニの面影はまったくない。

ボディー全長に占める室内長の割合を、メルセデスはBSI(Body Space Index)と呼んでいる。体格指数(BMI=Body Mass Index)にひっかけた造語だから、ここは笑うところである。

新型フォーツーのBSIは、75%に達する。そして、これをしのぐのはフォーフォー(77%)だけだという。でも、フォーフォーは4ドアだ。「ほとんどぜんぶ室内」というクルマのキャラクターが、ドアを開けてすぐ了解できるのはフォーツーのほうである。

フォーツーのシティーカーとしての新たな自慢は、3.3mの最小回転半径である。ステアリングの切れ角が増したことにより、先代より90cmも小さくなった。軽自動車を含む乗用車のなかで最も小回りがきく。

その効果を体験させるために、試乗会は室内カート場を基地にして行われた。

全幅が一気に10cm広がり、室内幅も増した。ヘッドレスト一体型のスポーティーなデザインのシートが装着される。
全幅が一気に10cm広がり、室内幅も増した。ヘッドレスト一体型のスポーティーなデザインのシートが装着される。 拡大
「フォーツー」には従来どおり、2分割式のハッチゲートが備わる。下のゲートの耐荷重は100kg。またパネルを開けると収納スペースが現れる。ラゲッジスペースの容量は260~350リッター。(クリックすると荷室のバリエーションが見られます)
「フォーツー」には従来どおり、2分割式のハッチゲートが備わる。下のゲートの耐荷重は100kg。またパネルを開けると収納スペースが現れる。ラゲッジスペースの容量は260~350リッター。(クリックすると荷室のバリエーションが見られます) 拡大
「フォーツー」の場合、ステアリングのフルロックで内輪が51度(写真)、外輪が38度まで切れる。フォーフォーは内輪35度、外輪29度。
「フォーツー」の場合、ステアリングのフルロックで内輪が51度(写真)、外輪が38度まで切れる。フォーフォーは内輪35度、外輪29度。 拡大
「フォーツー」の“小回り性能”を実演しているところ。白い円の半径が最小回転半径と同じ3.3mになっている。フォーフォーの最小回転半径は4.1m。
「フォーツー」の“小回り性能”を実演しているところ。白い円の半径が最小回転半径と同じ3.3mになっている。フォーフォーの最小回転半径は4.1m。 拡大

期待のツイナミックの出来は……

ルノーとの共同開発ということで、フランス車っぽさをひそかに期待していたが、走りだすと、乗り味はスマートである。

たしかに10cmワイドトレッドになった実感はある。サスペンションは先代よりストローク感が増し、15インチタイヤからの突き上げもマイルドになった。けれども、絶対的に短いホイールベースがもたらすピョコピョコした乗り心地の基本キャラは変わっていない。

リアに置かれる新エンジンは998ccの3気筒。71psのパワーは先代と同じだが、以前ほどの軽快感を感じなかった。それも当然で、車重は100kg増え、940kgに達している。初代スマートは750kgだった。隔世の感である。

さらにキビキビ感をスポイルしていたのは、“ツイナミック”と呼ばれるゲトラグ製のデュアルクラッチ6段自動変速機である。新型でいちばん期待していたのがこれだったのだが、ちょっとかったるい変速スピードは先代とそう変わらない。スポーツモードにすると、多少速くなるが、そのかわりギアをホールドしようとするので、押しつけがましくなる。総じて「フォルクスワーゲンup!」や「フィアット500」系のシングルクラッチ式セミオートマのほうが洗練されていると思った。

これまでスマートにはセミオートマしかなかったが、新型からは5段MTが登場した。実はヨーロッパでもアメリカでも標準ギアボックスはMTである。日本市場も、限定第2弾はぜひMTを入れてもらいたい。

試乗時間は120分。残り20分は、あちこちでUターンしてまわった。なるほど笑えるくらい小回りがきく。ホイールベースが短いから、内輪差に気を使うこともない。Uターンするのにこれだけ躊躇がいらないと、新しい自由を得たような気持ちになる。

高速道路を行く。突然の横風で車両が不安定になったとき、ESPを用いて走行安定性を回復させる「クロスウインドアシスト」機構が標準で備わる(80km/h以上で作動)。
高速道路を行く。突然の横風で車両が不安定になったとき、ESPを用いて走行安定性を回復させる「クロスウインドアシスト」機構が標準で備わる(80km/h以上で作動)。 拡大
荷室のフロアボードを上げると1リッター直3自然吸気エンジンが現れる。リアのサスペンション形式は従来と同じドディオン式。
荷室のフロアボードを上げると1リッター直3自然吸気エンジンが現れる。リアのサスペンション形式は従来と同じドディオン式。 拡大
ツイナミックと呼ばれるデュアルクラッチの6段ATは新型スマートの目玉装備のひとつ。ハードウエア自体はパートナーのルノーの新型「トゥインゴ」と同じものだが、ソフトウエアはそれぞれが独自開発したものを用いているという。
ツイナミックと呼ばれるデュアルクラッチの6段ATは新型スマートの目玉装備のひとつ。ハードウエア自体はパートナーのルノーの新型「トゥインゴ」と同じものだが、ソフトウエアはそれぞれが独自開発したものを用いているという。 拡大
専用の無料アプリ「スマート・クロス コネクト」をダウンロードすれば、スマートフォンをナビ、オーディオ、ハンズフリー通話の統合デバイスとして使用できる。通常のナビゲーションシステムもオプション設定されている。
専用の無料アプリ「スマート・クロス コネクト」をダウンロードすれば、スマートフォンをナビ、オーディオ、ハンズフリー通話の統合デバイスとして使用できる。通常のナビゲーションシステムもオプション設定されている。 拡大

フォーフォーにもチョイ乗り

3代目スマートは、米国市場に初めて本格参入するスマートである。日本では限定モデルにリストラされてしまったが、アメリカはまずフォーツーのみが上陸する。全幅を拡大し、ノーズを突き出して“押し出し”を強調したのも、米国市場対策であるような気がする。

一方、フォーフォーの発売は来年の1月。まだ認証が下りていないため、外は走れなかったが、室内カート場でチョイ乗りすることができた。

エンジンが遠いので、フォーツーより静かである。同じ71psの1リッター3気筒で、車重は65kg重いから、フォーツーよりさらに非力なはずだが、カーブばかりの室内カート場ではわからなかった。

3495mmの全長は軽自動車より10cm長いが、リアシートの足もとは狭い。リアドアもリア窓も小さい。しかし後席に座ると、昔の小型4ドアセダンのリアシートみたいに楽しげで、なつかしかった。この閉所感は子どもには喜ばれそうだ。

価格は標準グレードの「パッション」が209万円。本革シートが付く「プライム」が229万円。フォーツーとそれほど変わらない。

3代目フォーツーは“reduce to the max”(徹底的に減らせ)をうたい文句にした初代モデルからはだいぶ変質した。となると、たしかにフォーフォーのほうがいいかもしれない。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=高橋信宏)

未発売の「フォーフォー」は、今回は屋内のカートコースでの試乗に限られた。
未発売の「フォーフォー」は、今回は屋内のカートコースでの試乗に限られた。 拡大
「フォーフォー」の乗車定員は車名にもあるとおり4人。2人掛けのリアシートには、50:50の分割可倒機構が備わる。リアドアは直角に近い85度まで開き、前後長も約80cmと短い。
「フォーフォー」の乗車定員は車名にもあるとおり4人。2人掛けのリアシートには、50:50の分割可倒機構が備わる。リアドアは直角に近い85度まで開き、前後長も約80cmと短い。 拡大
「フォーフォー」のラゲッジルーム容量は185~975リッター。リアゲートは「フォーツー」とは異なり、上方にのみ開く。(クリックすると荷室のバリエーションが見られます)
「フォーフォー」のラゲッジルーム容量は185~975リッター。リアゲートは「フォーツー」とは異なり、上方にのみ開く。(クリックすると荷室のバリエーションが見られます) 拡大
カタログモデルとなる「フォーフォー」には写真のブルーを含めボディーカラーは全8バリエーションが用意される。
カタログモデルとなる「フォーフォー」には写真のブルーを含めボディーカラーは全8バリエーションが用意される。 拡大
スマート・フォーツー エディション1
スマート・フォーツー エディション1 拡大
 
スマート・フォーツー エディション1(RR/6AT)/フォーフォー パッション(RR/6AT)【試乗記】の画像 拡大

テスト車のデータ

スマート・フォーツー エディション1

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2755×1665×1545mm
ホイールベース:1875mm
車重:940kg
駆動方式:RR
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ
トラスミッション:6AT
最高出力:71ps(52kW)/6000rpm
最大トルク:9.3kgm(91Nm)/2850rpm
タイヤ:(前)165/65R15 81T/(後)185/60R15 84T(ミシュラン・エナジーセーバー)
燃費:21.9km/リッター(JC08モード)
価格:199万円/テスト車=199万円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

スマート・フォーフォー パッション
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スマート・フォーフォー パッション

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3495×1665×1544mm
ホイールベース:2494mm
車重:1005kg
駆動方式:RR
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ
トラスミッション:6AT
最高出力:71ps(52kW)/6000rpm
最大トルク:9.3kgm(91Nm)/2850rpm
タイヤ:(前)165/65R15 81H/(後)185/60R15 84T(ダンロップ・スポーツ ブルーレスポンス)
燃費:--km/リッター
価格:209万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様参考値。価格は日本仕様のもの。

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

 
下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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